2026.09.24

顎関節症のマウスピースは保険適用?費用と3つの注意点

顎関節症の治療でマウスピースをすすめられたとき、費用はどのくらいかかるのか、保険は使えるのかが気になる方は多いのではないでしょうか。当院でも、装置そのものより先に費用のご質問をいただくことがあります。

本記事では、顎関節症のマウスピース治療について、保険の扱いと作製の流れ、そして使ううえで知っておいていただきたい注意点を整理します。

顎関節症のマウスピースは、多くの場合で保険が使えます

顎関節症のマウスピースは、多くの場合で保険が使えます

先に結論をお伝えします。顎関節症や歯ぎしりの治療を目的として歯科医院で作るマウスピースは、多くの場合、健康保険の適用対象となります。自費のみと思われている方が少なくないのですが、治療目的であれば保険診療の中で作製できるのが一般的です。

スプリントとナイトガードは何が違うのか

歯科では、顎関節症の治療に使う装置をスプリントと呼びます。歯ぎしりから歯を守る目的の装置はナイトガードと呼ばれることが多く、名前が使い分けられています。

ただ、実際の形は似ており、どちらも透明または白い樹脂で作られた、歯列を覆う装置です。目的が「関節や筋肉の負担を減らすこと」なのか「歯のすり減りを防ぐこと」なのかによって、厚みや覆う範囲、調整の仕方が変わってきます。

費用の目安と、自己負担が変わる要素

保険適用の場合、3割負担の方で数千円程度が一つの目安となります。装置の種類、同時に行う検査や処置の内容、通院回数によって金額は変わるため、正確な費用は受診時にご確認ください。

自費で作る場合は、材質や設計の自由度が上がる分、金額も変わります。当院では、どちらの選択肢がその方に向いているかをご説明したうえで決めていただいています。

保険が使えるかどうかは、装置の目的によって判断が分かれます。顎関節症や歯ぎしりの治療を目的とする場合と、スポーツ時の保護や矯正治療に伴う装置とでは、扱いが異なります。
同じ「マウスピース」という言葉でも中身が違うため、費用の情報を調べる際は、何を目的とした装置なのかを確認していただくと混乱が少なくなります。

なお、装置の費用だけでなく、その前後の検査や調整のための通院費も発生します。
総額の見当をつけたい場合は、初診の際に治療の見通しとあわせてお尋ねください。金額と通院回数の目安を、治療を始める前にお伝えします。

作製から使い始める
までの流れ

作製から使い始めるまでの流れ

検査と型取り

最初に、症状の経過や生活の中の癖を伺い、顎の動きや噛み合わせの状態を確認します。

その後、歯型を取ります。型取りから完成までは1ヶ月程度が目安です。
院内で説明を受けながら進めますので、初診から装着開始まで2回程度の通院を見込んでいただくと良いかと思います。

装着と調整

完成した装置は、そのまま渡して終わりではありません。実際に口の中で当たり具合を確認し、削って調整します。

この調整こそが、スプリント療法の要になる部分です。
既製の装置では代えがきかないのは、ここに理由があります。

装着後の通院については、定期的に通っていただくのではなく、使っているうちに噛み合う位置が変わって違和感が出たり、異常を感じたりした場合にご来院いただく形をとっています。
気になることがあれば、いつでもご相談ください。

市販のマウスピースとの違い

薬局やインターネットで販売されている、お湯で軟らかくして自分で形をつけるタイプの製品があります。
手軽ではあるのですが、顎関節症の治療目的で使うには注意が必要です。

歯科用に個別作製した装置は、その方の噛み合わせに合わせて厚みや接触点を調整します。
既製品は個々の状態に合わせた調整が難しく、合わない装置を使い続けることで、かえって特定の歯や関節に負担が集中することがあります。
日本顎咬合学会でも、顎の症状への対応は状態の評価を踏まえて行うべきものとして扱われています。

使い続けるうえで
知っておきたい
3つの注意点

使い続けるうえで知っておきたい3つの注意点

装着当初は違和感があるのが普通です

初めて装着した夜は、異物感で寝つきにくいと感じる方が多いです。
数日から2週間ほどで慣れていくことが一般的ですが、慣れ方には個人差があります。

痛みが出る、特定の歯だけが強く当たるといった場合は、我慢せずご連絡ください。調整で改善することがほとんどです。

装置には寿命があります

樹脂製の装置は、使ううちにすり減り、割れることもあります。
歯ぎしりの強い方では消耗が早く、1〜2年程度で作り替えが必要になる場合もあります。

保険での作り替えには期間の決まりがあるため、あわせて受診時にご確認いただくと安心です。

装置だけでは根本の癖は変わりません

マウスピースは、かかる力を受け止めて分散させる装置です。
力そのものをなくす装置ではありません。

日中の食いしばりの癖が残っていれば、就寝時だけ装置をつけていても負担は続きます。
当院では、装置の作製と並行して、日中に上下の歯を離す意識づけや、姿勢や生活習慣の見直しをあわせてお伝えしています。
装置と生活の両方から負担を減らしていく。この組み合わせが、経過を左右します。

毎日の扱い方と
手入れの仕方

毎日の扱い方と手入れの仕方

装置は口の中に長時間入れるものです。清潔に保つことが、そのまま口の健康につながります。

洗い方と保管

使用後は流水で洗い、歯ブラシで軽くこすって汚れを落とします。
歯磨き粉は研磨剤が入っているものが多く、装置の表面に細かい傷をつけることがあるため、基本的には使いません。

熱湯や食器乾燥機は変形の原因になります。樹脂は熱に弱く、一度変形すると噛み合わせが合わなくなります。
洗った後は水気を切り、風通しのよい状態で専用ケースに保管してください。乾いた状態で放置すると割れやすくなるため、長期間使わない場合は水に浸けて保管する方法をご案内することもあります。

定期的な確認のすすめ

装置を使い始めると、通院の必要を感じなくなる方がいらっしゃいます。
ただ、装置は使ううちに形が変わり、口の中の状態も少しずつ変化します。

3〜6か月ごとの定期健診の際に、装置の状態と噛み合わせをあわせて確認していただくと安心です。
装置の点検は予防歯科のメンテナンスと同じタイミングで行えるため、通院の負担が増えることはありません。

においや変色が気になるとき

長く使っていると、装置が黄ばんだり、においが出たりすることがあります。
多くは汚れの蓄積によるものですが、洗浄では取り切れない場合もあります。

装置用の洗浄剤を使う方法もありますので、気になる場合は自己流で薬品を使う前にご相談ください。
変色が急に進んだ場合は、割れやひびが隠れていることもあります。

よくある質問

Q.マウスピースは毎日つけなければいけませんか?

多くの場合、就寝時に毎晩装着していただきます。歯ぎしりや食いしばりは睡眠中に起こりやすく、連続して使うことで顎への負担が安定して減るためです。
旅行などで数日使えなかったからといって、それまでの効果がなくなるわけではありません。使用時間や頻度は症状によって変わりますので、指示された使い方をご確認ください。

Q.このマウスピースをスポーツ用として代用できますか?

目的や素材が異なるため、スポーツにはご使用いただけません。治療用のマウスピースは顎への負担軽減や噛み合わせの安定を目的としていますが、スポーツ用は「強い衝撃から歯や顎を守る」ための衝撃吸収性に優れた素材で作られています。
万が一、治療用のものを装着して強い衝撃を受けると、破損して口の中を傷つける恐れがあります。スポーツ時に装着したい場合は、専用のスポーツマウスガードについてご相談ください。

Q.装置をつけたら噛み合わせが変わった気がします

装着によって筋肉の緊張がゆるみ、それまでとは違う位置で噛むように感じることがあります。
多くは一時的な変化ですが、長く続く場合や食事に支障が出る場合は調整が必要です。放置せず受診してください。当院では装着後の経過を確認しながら、必要な調整を行っています。

Q.マウスピースを使えば顎関節症は治りますか?

改善を助ける有力な方法ではありますが、効果のあらわれ方には個人差があり、すべての方に同じ経過をお約束できるものではありません。
原因が複数ある場合、装置だけでは十分に負担が減らないこともあります。生活習慣の見直しや運動療法と組み合わせ、経過を見ながら方針を調整していく形が一般的です。