2026.09.30

子供の顎関節症、親が気づく3つのサインと受診目安

顎関節症は大人の症状という印象を持たれがちですが、お子様にみられることもあります。

当院でも「あくびのときに顎が鳴るようだ」と保護者様から相談を受けることがあります。

本記事では、子供の顎関節症について、家庭で気づきやすいサインと受診を検討する目安、成長期だからこそ見直しておきたい習慣を整理してお伝えします。

子供の顎関節症は、
大人とは気づき方が
違います

子供の顎関節症は、大人とは気づき方が違います

先にお伝えしておきたいのは、お子様は症状を言葉にしにくいという点です。

大人であれば「顎が痛い」と訴えられますが、お子様は違和感を痛みとして認識していないことがあります。

子供が症状を訴えにくい理由

痛みの程度が軽く、日常生活に支障がない段階では、お子様自身が異常だと思わないことがほとんどです。

顎が鳴っていても「そういうもの」と受け止めている場合もあります。

そのため、保護者様が食事や会話の様子から気づくケースが多くなります。日本顎咬合学会でも、顎の機能は成長とともに変化していくものとして扱われており、成長期の観察には意味があります。

成長期特有の背景

小学生から中学生にかけては、乳歯から永久歯への生え変わりが進み、顎の骨も成長していく時期です。

噛み合わせが一時的に不安定になることは珍しくありません。

近年、この時期のトラブルの背景として注目されているのが「口腔機能発達不全症」との関連です。例えば、日常的に口呼吸をしていると、舌が正常なポジション(上顎)を取れなくなります。

舌が下がると気道が狭くなり(いびきの原因の一つになります)、睡眠中はなんとか気道を確保しようとして寝返りが増えたり(寝相が悪いのはこれが原因です)、歯ぎしりをするようになったりするのです。
この時期の顎の音や違和感が、すべて治療を必要とするわけではありません。

成長に伴って落ち着いていくものもあります。ただ、こうした呼吸や舌の癖など、顎に負担のかかる要因が隠れている場合には、早めに気づいて見直しておくほうが、後々の負担を減らせます。

保護者様が気づきやすい
3つのサイン

保護者様が気づきやすい3つのサイン

固いものを避けるようになった、食べるのが遅くなった、いつも同じ側だけで噛んでいる。こうした変化は、顎に負担がかかっているサインのことがあります。

1.食事のときの様子が変わった

とくに片側だけで噛む習慣は、顎の左右のバランスに影響することがあります。食卓での様子は、家庭でこそ気づける手がかりです。

2.大きく口を開けられない

あくびのときに口が開ききらない、歯科医院で「もう少し大きく開けて」と言われても開けられない。こうした様子があれば、開口障害の可能性を考えます。

開口量の目安は、大人で縦にした指が3本入るくらい、およそ40mmとされます。

お子様は体格によって差がありますので、数値そのものより「以前より開けにくくなっていないか」という変化に注目していただくと分かりやすいかと思います。

3.顎から音がする、朝に顎がだるそう

口を開け閉めするときに音が鳴る、起床時に顎のあたりを気にしているといった様子です。睡眠中の歯ぎしりが関わっている場合もあります。

お子様の歯ぎしりは成長過程でみられることもあり、必ずしも異常とは限りません。ただ、痛みや開けにくさを伴う場合は、一度確認しておくと安心です。

成長期に
見直しておきたい習慣

成長期に見直しておきたい習慣

安静時、上下の歯はわずかに離れているのが本来の状態です。

姿勢と、日中の歯の接触

学習中やゲーム中に、無意識に噛みしめているお子様は少なくありません。

うつむいた姿勢が長く続くと、首や顎まわりの筋肉が緊張しやすくなります。頬杖、うつ伏せ寝、片側を下にして寝る癖も、顎への負担につながります。叱るのではなく、気づいたときに声をかけて姿勢を整える。この繰り返しが効きます。

口呼吸と口まわりの機能

口が開いたままの状態が続くと、唇や舌の使い方にも影響します。

私は口育士として、お子様のお口の発育に関わってきました。呼吸、飲み込み、姿勢はそれぞれつながっており、顎の負担とも無関係ではありません。

鼻がつまりやすい、いつも口が開いている、食事のときにくちゃくちゃと音がする。こうした様子があれば、顎の相談とあわせてお伝えください。

家庭でできる観察のポイント

毎日確認する必要はありません。食事の様子、あくびのときの開き方、朝の顔つき。この3つを、ときどき気にかけていただくだけで十分です。

変化に気づいたら、いつからか、どんなときかをメモしておいていただくと、受診時の判断がしやすくなります。

部活動や受験期に負担が
増えることがあります

部活動や受験期に負担が増えることがあります

力を入れる場面では、自然と歯を食いしばります。

運動系の部活動では日常的にこれが起こりますし、受験期のように緊張が続く時期にも噛みしめる時間が長くなります。

生活の変化と症状が出た時期が重なっていないか。この視点は、原因を絞り込むうえで手がかりになります。中学生になってから症状を訴え始めたというお子様では、生活リズムや姿勢の変化が背景にあることも珍しくありません。

部活動をやめる必要はありません。休憩中に顎の力を抜く、就寝前に温めるなど、負担を逃がす工夫を組み合わせるだけでも変わってきます。

お子様に伝えるときの
言葉選び

お子様に伝えるときの言葉選び

顎の癖を直そうとするとき、注意の仕方によっては、お子様が気にしすぎてしまうことがあります。

意識づけは短く、繰り返し

「噛みしめないで」と強く言うより、「歯、離れてる?」と短く確認するほうが続きます。

癖は一度で直るものではなく、気づく回数を増やしていくことで少しずつ変わっていきます。

学習机やゲーム機の近くに小さな付箋を貼っておく方法をご案内することもあります。声かけの回数を減らせるうえ、お子様自身が気づく習慣につながります。

不安をあおらない

顎の音や違和感があると、保護者様が心配のあまり詳しく説明してしまうことがあります。

ただ、お子様にとっては「自分の顎は悪いのかもしれない」という不安だけが残ってしまうことがあります。

痛みがなく経過を見てよい段階であれば、「歯医者さんに見てもらったから大丈夫」と伝えていただくだけで十分です。当院では、お子様本人にも分かる言葉で状態をご説明し、必要なことだけをお伝えするようにしています。

受診の目安と、
当院の考え方

受診の目安と、当院の考え方

痛みが2週間以上続く、口が開けにくい状態が続いている、食事に支障が出ている。
このいずれかに当てはまる場合は、受診をご検討ください。音だけで痛みがない場合は、経過を見ながら定期健診の際に相談していただく形でも構いません。

当院は開業から30年以上、親子2世代・3世代で通ってくださる患者様の多い地域の歯科医院です。

お子様の顎の相談は、生え変わりや歯並びの相談と重なることもあります。成長の段階によって、今対応すべきことと、もう少し様子を見てよいことは変わります。

お子様の場合、大人と同じ治療をそのまま当てはめるのではなく、成長を妨げない範囲で負担を減らす方針を優先します。効果のあらわれ方には個人差があり、経過は一人ひとり異なります。

まずは状態を確認し、ご家庭でできることからご説明します。

よくある質問

Q. 子供の顎が鳴りますが、痛みはないようです。受診は必要ですか?

痛みや開けにくさがなければ、すぐに治療が必要とは限りません。成長に伴って落ち着いていくこともあります。

ただし、音が大きくなってきた、痛みを訴えるようになった、口が開けにくくなったという変化があれば、確認をおすすめします。定期健診の際にあわせてご相談いただくのも良い方法です。

Q. 何歳ごろから顎関節症になりますか?

はっきりした年齢の線引きはありません。小学生でみられることもあれば、思春期に入ってから症状が出る場合もあります。

部活動での食いしばりや、学習時間の増加に伴う姿勢の変化が背景にあることもあります。年齢よりも、生活の中で顎に負担がかかる要素が増えていないかという視点で見ていただくと良いかと思います。

Q. 子供にもマウスピースを使いますか?

使う場合もありますが、大人と同じようには考えません。成長期は顎の骨や歯並びが変化していく時期のため、装置が成長に与える影響を考慮する必要があります。

まずは生活習慣の見直しから始め、必要と判断した場合に装置の使用を検討します。判断は状態によって変わりますので、受診時にご相談ください。

Q. 歯並びが悪いと顎関節症になりやすいですか?

歯並びは要因の一つではありますが、それだけで決まるものではありません。歯並びが整っていても症状が出る方はいますし、その逆もあります。

癖、姿勢、緊張の度合いなど、複数の要素が重なって起こると考えられています。歯並びが気になる場合は、顎の症状とあわせて相談していただくと、全体を見た方針を立てやすくなります。