長く続く頭痛の原因が分からず、あごの不調と関係があるのではと気になっている患者様は少なくありません。
当院でも、「顎関節症と頭痛は関係があるのか」というご相談をいただきます。あごと頭は、筋肉でつながっています。そのため、あごへの負担が頭痛として現れることがあります。
本記事では、顎関節症で頭痛が起こる仕組みと、自分でできる対処法を、噛み合わせを診てきた立場から解説します。
なぜ顎関節症で
頭痛が起こるのか

まず押さえておきたいのは、あごと頭が同じ筋肉のネットワークでつながっている点です。あごの不調が、頭の痛みに波及する理由がここにあります。
あごの筋肉と頭の痛みのつながり
噛むときに使う筋肉のうち、側頭筋という筋肉は、こめかみから頭の横に広く分布しています。
食いしばりや歯ぎしりでこの筋肉が疲れると、こめかみのあたりに締めつけるような痛みが出ることがあります。あごの筋肉の緊張が、そのまま頭の痛みとして感じられるわけです。
側頭筋は、手のひらを広げたほどの範囲に広がる大きな筋肉です。食いしばるたびに、この筋肉はぎゅっと収縮します。
1日に何度も、あるいは睡眠中ずっと力が入り続ければ、筋肉は疲労し、こわばっていきます。肩を長時間すくめていると肩がこるのと、同じ仕組みと考えていただくと分かりやすいかと思います。
血流と自律神経を通じた影響
筋肉の緊張が続くと、血流が滞り、痛みを起こす物質がたまりやすくなります。
さらに、痛みや緊張が自律神経のバランスに影響し、頭の重さやだるさにつながることもあるとされています。この2つの仕組みが重なって、頭痛が長引く場合があります。
肩や首がこったときに頭が重く感じるのと、似た流れです。あごの筋肉のこわばりが、じわじわと頭全体の不快感に広がっていく。こうしたつながりがあるため、頭痛の対策を考えるとき、あごの状態にも目を向ける意味があります。
顎関節症による頭痛の
特徴と見分け方

結論からお伝えします。顎関節症に伴う頭痛は、こめかみを中心とした締めつけ感が特徴です。他の頭痛との違いも見ていきましょう。
どんな頭痛か
多くは、こめかみや側頭部に、締めつけられるような鈍い痛みが出ます。
ズキンズキンと脈打つ強い痛みというより、じわじわと重い痛みが続くタイプです。あごを動かすと痛みが増す、朝起きたときに頭やあごが重い、という場合は、食いしばりとの関わりが考えられます。
こめかみを指で押すと痛い、夕方にかけて頭が重くなる、といった形で気づく方もいます。
仕事や家事で気を張る時間が長い日ほど強くなる、という傾向を感じる方も少なくありません。痛みの場所とあごの状態が結びついているかどうかが、見分けの手がかりになります。
肩こり・首こり・耳の症状
あご周りの緊張は、首や肩の筋肉にも広がります。頭痛とあわせて、肩こりや首のこわばり、耳のつまり感やめまいを訴える方もいます。これらが同時に出ているときは、あごの負担が背景にある可能性があります。
あご、首、肩の筋肉は、たがいに連動しています。一か所がこわばると、周りの筋肉もかばうように緊張し、こりが連鎖していきます。
頭痛と肩こりがいつも一緒に来る、マッサージを受けても戻ってしまう、という場合は、おおもとにあごの負担がないか、視点を広げてみる意味があります。
片頭痛など他の頭痛との違い
頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛など、さまざまな種類があります。光や音で悪化する、吐き気を伴うといった場合は、別の頭痛が考えられます。
あごの症状と重なるかどうかが、見分けの一つの手がかりです。自己判断は難しいため、続く頭痛は医科と歯科の両面から確認すると安心です。
片頭痛は、脈打つような強い痛みで、体を動かすと悪化しやすいのが特徴とされます。一方、あごの負担による頭痛は、締めつけるような鈍い痛みが続くことが多く、性質が異なります。
ただし、両方が重なって起こることもあり、線引きは簡単ではありません。頭痛のタイプによって対処も変わるため、原因の見極めが大切になります。
自分でできる対処と
受診の目安

頭痛のもとにあごの負担がある場合、あごをいたわることが対処の柱になります。ここでは、家庭でできる工夫と受診の目安をまとめます。
食いしばりへの気づきとセルフケア
日中、上下の歯が触れていることに気づいたら、そっと離す。この習慣だけでも、側頭筋の負担は変わってきます。
こめかみやあごの筋肉を、蒸しタオルで温める、指でやさしくほぐすといったケアも助けになります。硬いものを控える、頬杖をやめる、睡眠を整えることも、緊張をやわらげる支えになります。
デスクワークの合間に、あごの力を抜いて肩を回す、深く息を吐くといった小休止をはさむのも一つの方法です。
食いしばりは、集中しているときほど起こりやすいものです。こまめに力を抜くきっかけをつくることで、筋肉が張り続けるのを防ぎやすくなります。
ただし、痛みが強いときに強くもんだり、無理に口を大きく動かしたりするのは避けてください。
受診を検討すべきサイン
頭痛が長く続く、痛み止めが効きにくい、あごの痛みや開けにくさを伴う。こうした場合は、自己判断を避けて相談してください。
なお、これまでにない強い頭痛や、しびれ・ろれつの回りにくさを伴うときは、医科の受診を優先してください。
噛み合わせから頭痛を
考える当院の対応

私は補綴や噛み合わせを専門的に学び、あごの負担と全身のつながりを意識しながら診療にあたってきました。頭痛の背景に食いしばりや噛み合わせの負担があると考えられる場合、その負担を減らす方法を一緒に考えます。
睡眠中の負担には、マウスピース(ナイトガード)で歯や関節を守る方法もあります。日本顎咬合学会など噛み合わせを扱う学会でも、筋肉の緊張と痛みの関わりが研究されています。
当院では、頭痛のすべてをあごのせいと決めつけず、必要に応じて医科との連携も考えながら対応します。
頭痛は、原因が一つとは限らない症状です。あごの負担が関わっていそうでも、まずは食いしばりの癖や生活習慣を一緒に振り返り、負担を減らすところから始めます。
それでも改善しない、あるいは頭痛そのものが強い場合は、内科や脳神経内科など医科での確認をおすすめすることもあります。抱え込まず、気になる段階でご相談ください。
よくある質問
Q.頭痛の原因が顎関節症かどうか、自分で分かりますか?
完全な見分けは難しいものの、目安はあります。こめかみの締めつけ感、あごを動かすと痛む、朝の食いしばり感、肩こりの併発。これらが重なるときは、あごの負担が関わっている可能性があります。
ただし他の頭痛との区別は自己判断が難しいため、続く場合は確認をおすすめします。頭痛の記録をつけ、どんなときに強くなるかをメモしておくと、受診時の手がかりになります。
Q.顎関節症を治療すれば頭痛もなくなりますか?
あごの負担が頭痛の一因であれば、負担を減らすことで頭痛が和らぐことがあります。
ただし、頭痛の原因は一つとは限らず、必ず解消するとは言い切れません。頭痛が強い、続く場合は、医科と歯科の両面から原因をさぐると安心です。経過には個人差があります。
Q.市販の痛み止めを飲み続けても大丈夫ですか?
一時的に痛みを抑えることはできても、原因が残れば繰り返しやすくなります。
痛み止めが頻繁に必要な状態が続くときは、背景に食いしばりなどの負担がないか、一度確認しておくとよいかと思います。自己判断で飲み続けず、相談してください。
Q.マウスピースは頭痛にも役立ちますか?
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりが強い方では、マウスピースで筋肉や関節の負担を軽くし、朝の頭痛が和らぐことがあります。
ただし、合わないものを使うと逆効果になることもあります。歯科で調整したものを使うのが安心です。市販のものは手軽ですが、かみ合わせに合わないと、かえってあごに負担がかかる場合があります。
使ってみて違和感が続くときは、そのまま我慢せず相談してください。
頭痛とあごの不調が重なるとき、その二つはつながっているかもしれません。気になる方は、自己判断を避けて一度ご相談ください。