お子様の乳歯が抜けてから時間が経つのに、永久歯が出てくる気配がない。そんなご相談で来院される保護者様は、当院でも珍しくありません。
萌出時期には大きな個人差がありますが、いつまでなら様子を見てよいのか、どこから受診を考えるべきかは、ご家庭で判断しにくい部分でもあります。
本記事では、永久歯が生えてこないときに考えられる原因と、受診を判断する目安について、丁寧にお伝えします。
永久歯が
生えてこないとは何か
(時期の目安)

永久歯が生える時期には個人差があるため、「遅い」と判断するには標準的な時期との比較が手がかりになります。
日本小児歯科学会では、おおむね6歳前後から永久歯への生え変わりが始まり、12〜13歳ごろまでに第二大臼歯までが生えそろうとされています。
標準的な萌出時期
主な永久歯の萌出時期の目安は次のとおりです。
| 中切歯 (前歯の真ん中) |
6〜8歳 |
|---|---|
| 側切歯 (前歯のとなり) |
7〜9歳 |
| 犬歯 | 9〜12歳 |
| 第一小臼歯・ 第二小臼歯 |
9〜12歳 |
| 第一大臼歯 (6歳臼歯) |
6〜7歳 |
| 第二大臼歯 (12歳臼歯) |
11〜13歳 |
これらはあくまで平均値で、半年〜1年程度のずれはよくあることです。性別によっても傾向に差があり、女の子のほうが半年ほど早く進む傾向があると言われています。
「遅い」と判断する目安
一般的には、乳歯が抜けてから6ヶ月以上経っても永久歯が見えてこない場合、または同年代と比較して1年以上の遅れがある場合に、検査を考える目安となります。
私個人の見解としては、保護者様が不安を抱えたまま様子を見続けるよりも、一度レントゲン検査で内部の状態を確認したほうが、その後の見通しが立ちやすいと感じています。
「異常がない」という確認ができるだけでも、安心して様子を見られるようになります。
永久歯が生えてこない
主な原因

原因は一つではありません。結論を先に申し上げると、大きく「もともと永久歯がない」「永久歯が骨の中で止まっている」「他の歯やスペースが妨げている」の3つに整理できます。
先天的に永久歯がない場合(先天欠如)
先天欠如とは、生まれつき永久歯の数が少ない状態を指します。日本小児歯科学会の調査では、永久歯の先天欠如は10人に1人ほどの割合で見られると報告されており、決して珍しいものではありません。
多いのは下の側切歯、第二小臼歯、親知らずです。レントゲン検査で永久歯の存在を確認することで、はっきりと診断できます。
先天欠如が分かった場合でも、すぐに何かをしなければならないわけではありません。該当する乳歯を長く保存していく方針が中心となり、状況に応じて将来的な治療を計画していきます。
永久歯が骨の中に埋まっている場合(埋伏)
永久歯は骨の中で形成され、頃合いを見計らって萌出します。何らかの理由でこの萌出が止まってしまった状態が埋伏歯です。
原因としては、過剰歯(余分な歯)が妨げているケース、隣の歯がスペースを奪っているケース、永久歯自体の向きが斜めになっているケースなどがあります。
埋伏した永久歯をそのままにしておくと、隣の歯の根を傷つけたり、嚢胞(袋状の病変)の原因になったりすることがあるため、早めの把握が望ましいと考えられます。
過剰歯やスペース不足が妨げている場合
正中過剰歯と呼ばれる、上の前歯の真ん中付近に余分な歯ができることがあります。これがあると永久前歯の萌出を妨げることがあるため、レントゲンで確認したうえで抜歯を検討する場合もあります。
あごの成長とスペース不足が関係しているケースもあり、矯正歯科との連携が必要になることもあります。
自宅でできる
観察と受診の判断

観察ポイント
ご自宅で確認していただきたいポイントは次のとおりです。
- 同年齢のお子様と比べて、生え変わりが極端に遅れていないか
- 乳歯が抜けたあと、6ヶ月以上経っても永久歯が見えてこないか
- 永久歯が見えるべきあたりの歯茎が、不自然に膨らんでいないか
- 反対側はすでに永久歯になっているのに、片側だけ乳歯が残っていないか
片側だけ生え変わりが極端に進まない状況は、判断の手がかりとして特に分かりやすいサインです。左右差が3ヶ月以上続く場合は、レントゲンでの確認をお勧めしています。
受診を急ぐべきサイン
次のような場合は、早めに歯科医院での検査をお勧めします。
- 7〜8歳を過ぎても、上下の前歯がまったく永久歯に変わっていない
- 永久歯らしき白いものが歯茎から見えていたが、半年以上そのまま動いていない
- 片側だけ生え変わりが完了し、もう片側がまったく進まない
- 痛みや腫れがあり、お子様が気にしている
当院では、こうしたケースに対してまずパノラマレントゲンを撮影し、永久歯の有無・位置・向きを確認したうえで方針をご説明するようにしています。
お子様の年齢や状況に応じて、3〜6ヶ月の経過観察で済むこともあれば、矯正歯科への紹介を検討する場合もあります。
受診後の流れと
治療方針の考え方

レントゲン検査で永久歯の存在が確認できれば、自然萌出を待つか、矯正治療と連携してスペースを確保するかを判断します。
先天欠如が判明した場合は、乳歯をできるだけ長く保存する方針と、将来的な補綴(入れ歯やインプラントなど)の選択肢を、保護者様とお子様の年齢に合わせて段階的にご説明していきます。
長く小児を診てきた中で実感するのは、こうした診断は「早く知ること」自体が大きな価値を持つという点です。先のスケジュールが見えていれば、治療開始のタイミングを最善のかたちで設計できます。
よくある質問
Q.乳歯が残ったままでも問題ありませんか
乳歯の根が吸収されずに残ることがあり、状況によっては40〜50代まで使えるケースもあります。
ただし、乳歯は永久歯より小さく、根も短いため、長期的にどこまで持つかには個人差があります。定期的な経過観察を続け、限界が見えてきた段階で次の治療を考えるのが現実的です。
歯茎の状態と噛み合わせを併せて確認していきます。
Q.レントゲン検査はいつ受けるのが適切ですか
一つの目安は5〜6歳ごろです。この時期はちょうど永久歯への交換が始まる前後で、パノラマレントゲンを撮ることで永久歯の有無や位置関係が把握できます。
当院でも、生え変わりの不安があるご家庭には、この時期での検査をお勧めしています。検査結果に問題がなくても、その後の経過観察の基準となる重要な情報になります。
Q.永久歯が斜めに生えてきました。様子を見ても大丈夫ですか
軽度であれば自然に位置が修正されることもありますが、明らかに方向が逸れている場合は早めに歯科医院での評価をお勧めします。
放置すると、隣の永久歯の根を傷つけてしまうことがあるためです。自己判断は避け、画像検査を含めた診断を受けてください。状況によっては矯正歯科と連携した早期対応が有効な場合もあります。
Q.兄弟で同じように生え変わりが遅いです。遺伝はありますか
萌出時期の傾向や、先天欠如の有無については、家系内で似た傾向が出ることが知られています。
ご兄弟やご家族で同じ歯が欠如している場合は、念のためレントゲンで確認しておくと、その後の方針が立てやすくなります。遺伝的な背景があっても、対応方法は一人ひとり異なるため、個別に検討していきます。
永久歯の萌出には大きな個人差があります。気になる点があれば、自己判断で様子を見続けず、一度ご相談いただければと思います。