2026.09.28

顎が痛いときは何科を受診?歯科で診る5つの症状

顎が痛いとき、どこに相談すればよいのか迷う方は少なくありません。歯なのか、関節なのか、それとも別の原因なのか。当院にも「歯医者でよいのか分からず、しばらく様子を見ていました」という患者様がいらっしゃいます。

本記事では、顎の痛みで受診先を選ぶ際の考え方を、歯科で診る症状と他科を検討する場合に分けて整理します。

顎の痛みは、まず歯科で
ご相談いただける
症状です

顎の痛みは、まず歯科でご相談いただける症状です

結論からお伝えします。顎の痛みや口の開けにくさは、まず歯科で相談していただける症状です。顎関節症は、噛み合わせや歯ぎしり、食いしばりと深く関わることが多く、これらを日常的に扱っているのが歯科だからです。

なぜ歯科が窓口になりやすい
のか

顎関節は、耳のすぐ前にあり、噛む動作のたびに動いています。つまり、歯や噛み合わせの状態と切り離せない関係にあります。

日本顎咬合学会でも、噛み合わせと顎の機能を一体のものとして捉える考え方が示されています。歯科では、噛み合わせの状態、歯のすり減り方、詰め物や被せ物の高さ、歯ぎしりの痕跡といった手がかりを直接確認できます。原因の見当をつけるうえで、これは大きな利点です。

歯科の中でも相談先はいくつかあります

一般の歯科医院のほか、大学病院などの歯科口腔外科でも顎の症状を扱っています。まずは通いやすい歯科医院で相談し、より専門的な検査や治療が必要と判断された場合に紹介を受ける、という流れが現実的です。

症状の程度によっては専門機関と連携してご案内することもあります。最初から大きな病院を探さなければならない、と身構えていただく必要はありません。

歯科の受診を検討したい
5つの症状

歯科の受診を検討したい5つの症状

次のような症状がある場合、歯科でご相談いただくと原因にたどり着きやすくなります。

  1. 口を開け閉めするときに痛む
    あくび、食事、会話など、顎を動かす動作で耳の前あたりが痛む場合です。動かしたときだけ痛むのか、じっとしていても痛むのかは、状態を見分けるうえで手がかりになります。
  2. 口が大きく開かない
    縦にした指が3本入るくらい、およそ40mmが開口量の一つの目安とされます。指2本分ほどしか開かない、食事で大きく口を開けられないという場合、開口障害の可能性があります。
  3. 顎から音がする
    開け閉めのときに「カクッ」「ジャリッ」と音が鳴る症状です。音だけで痛みがない場合、すぐに治療が必要とは限りません。ただし音が変化してきた、痛みを伴うようになった場合は、一度確認しておくほうが安心です。
  4. 朝起きたときに顎がだるい
    睡眠中の歯ぎしりや食いしばりの影響が疑われます。ご家族に指摘されたことがある、歯がすり減っていると言われたことがある、といった心当たりがあれば、あわせてお伝えください。
  5. 顎の周囲に、痛みと関係する歯の症状がある
    歯の痛み、被せ物の違和感、詰め物が取れた後から噛みにくいといった変化と前後して顎が痛み始めた場合、噛み合わせの変化が関わっている可能性があります。
    治療した歯の高さがわずかに合っていないだけでも、噛む力のかかり方は変わります。数十マイクロメートル単位のずれを、人は違和感として感じ取ります。心当たりがある場合は、いつどの歯を治療したかをあわせてお伝えください。

受診を急いだほうがよいのはどんなときか

痛みの強さよりも、状態の変化の速さに注目してください。昨日まで普通に開いていた口が急に開かなくなった、腫れが短時間で広がっている、口を閉じられなくなった。こうした急な変化があるときは、早めに受診してください。

反対に、数か月かけて少しずつ気になってきたという場合は、慌てて当日中に受診する必要はありません。ただし放置すると慢性化することがありますので、症状が続くようであれば予約を取っておくことをおすすめします。

歯科以外の受診も
検討したほうがよい場合

歯科以外の受診も検討したほうがよい場合

耳鼻咽喉科を検討する場合

耳の痛み、耳だれ、聞こえにくさ、めまいを伴う場合には、耳の疾患が関わっていることがあります。顎関節は耳のすぐ前にあるため、耳の症状と区別がつきにくいことがあります。

内科や口腔外科を検討する場合

発熱を伴う、顎や頬が明らかに腫れている、皮膚が赤くなっているといった場合には、感染や炎症の可能性を考えます。また、口が急に開かなくなった、外傷の後から痛みが出たという場合も、早めの受診が必要です。

心臓に関わる病気で、顎や肩に痛みが出ることも知られています。胸の痛みや圧迫感、息苦しさを伴う場合は、迷わず医療機関を受診してください。自己判断で様子を見ないことが、この場合はとくに大切になります。

迷ったときの考え方

私個人の見解としては、痛む場所と一緒に出ている症状を手がかりに考えると整理しやすいかと思います。顎を動かしたときに痛み、歯ぎしりや噛み合わせに心当たりがあるなら歯科。耳や全身の症状を伴うなら、まず該当する科へ。判断に迷う場合は、歯科で相談したうえで必要な連携先をご案内する形でも構いません。

受診時に伝えていただきたいこと

受診時に伝えていただきたいこと

当院では、初診の際に症状の経過を丁寧に伺うところから始めます。次の情報があると、原因の見立てが早まります。

いつから症状が出たか。どの動作で痛むか。痛む場所は右か左か両方か。以前に外傷や矯正治療、大きな歯科治療を受けたことがあるか。仕事や生活で緊張が続く時期と重なっていないか。

私は補綴(ほてつ=被せ物や入れ歯、噛み合わせを扱う分野)を専門的に学んできました。臨床の現場では、噛み合わせのわずかな変化が顎の不調につながっているケースに出会います。断定は避けたほうがよいのですが、生活背景まで含めて聞き取ることで見えてくるものは確かにあります。

歯の痛みと顎の痛みは見分けにくいことがあります

「奥歯が痛い」と来院された患者様を診てみると、歯そのものではなく、噛む筋肉の痛みだったというケースがあります。反対に、顎が痛いと感じていたら、原因が親知らずや歯の根の炎症だったということもあります。

痛む場所と原因のある場所が一致しないのは、珍しいことではありません。歯の周囲と顎の関節は近く、神経の走行も重なる部分があるためです。この見分けをつけるうえでも、歯とその周囲を直接確認できる歯科が窓口として機能します。

初診でどのようなことをするか

顎の相談で受診された場合、当院ではまず問診に時間をかけます。次に、口の開き方、顎の動き、音の有無、噛む筋肉の張り、歯のすり減り方などを確認します。

必要に応じてレントゲンや歯科用CTで骨や関節の状態を確認し、その日のうちに見立てをご説明します。すぐに治療を始めるとは限らず、まずは生活の中で減らせる負担を整理してお伝えし、経過を見る場合もあります。

初診で歯型を取るとは限りませんので、時間の見当としては30分から1時間程度をみていただくと良いかと思います。

よくある質問

Q. 顎が痛いだけで歯医者に行ってもよいのでしょうか?

問題ありません。虫歯や歯周病の治療だけが歯科の役割ではなく、噛み合わせや顎の機能も診療の対象です。当院にも、歯そのものに問題がない状態で顎の相談にみえる患者様がいらっしゃいます。原因が歯科の範囲外と判断した場合には、適切な診療科をご案内しますので、まずはご相談ください。

Q. 痛みが出たり消えたりします。治まっているときに受診しても意味はありますか?

意味はあります。むしろ、症状が軽いうちに受診していただくほうが、原因を見つけやすく対応の選択肢も広がります。痛みが消えている時期でも、歯のすり減り方や筋肉の緊張、噛み合わせの状態から手がかりが得られます。痛みが強い時期は検査自体がつらくなることもあるため、早めの受診をおすすめします。

Q. 顎の痛みで、レントゲンやCTは必ず撮るのですか?

必ず撮るわけではありません。症状の経過と診察の内容から必要と判断した場合に行います。関節の形態や周囲の骨の状態を確認したいとき、歯科用CTが役に立つことがあります。撮影の必要性については事前にご説明しますので、疑問があればその場でお尋ねください。

Q. 痛み止めを飲んで様子を見てもよいですか?

一時的に痛みをやわらげる目的で使うことはあります。ただし薬で痛みを抑えている間も、原因となっている負担は続いています。飲み続けて受診を先延ばしにすると、症状が長引くことがあります。「薬で様子を見ているけれど大丈夫かな」と少しでも気になるようでしたら、まずは一度ご相談にいらしてください。