歯周病の手遅れになる症状とは?進行段階別の見極め方

「歯茎が腫れている」「歯がグラグラする」といった症状がある方は、歯周病が進行している可能性があります。 歯周病は日本人が歯を失う最大の原因であり、放置すると取り返しのつかない状態になることがあります。この記事では、歯周病の進行段階別の症状と、手遅れになる前に気づくべきサインについて解説します。 歯周病の進行段階と症状 歯周病は段階的に進行する病気で、早期に発見すれば改善できますが、放置すると歯を失うことになります。 歯肉炎(初期段階) 歯周病の最も初期の段階が「歯肉炎」です。この段階では、歯茎にのみ炎症が起きており、歯を支える骨には影響が及んでいません。 症状 主な症状は、歯茎の赤みや腫れ、歯磨き時の出血です。 歯肉炎の段階であれば、適切なブラッシングと歯科医院での専門的なクリーニングによって、完全に元の健康な状態に戻すことができます。つまり、この段階では「手遅れ」ではありません。 軽度歯周炎(初期〜中期段階) 歯肉炎が進行すると「軽度歯周炎」になります。この段階では、炎症が歯茎だけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)にも及び始めます。 歯と歯茎の間にできる「歯周ポケット」が深くなり、通常2〜3mmのポケットが4〜5mmになります。 症状 症状としては、歯茎の腫れや出血が頻繁になり、口臭が気になり始めることがあります。この段階でも、適切な治療によって進行を止め、ある程度の改善が期待できます。 中等度歯周炎(中期〜後期段階) 歯周病がさらに進行すると「中等度歯周炎」になります。歯周ポケットが6〜7mmと深くなり、歯を支える骨の破壊が進行します。骨の3分の1から2分の1程度が失われている状態です。 症状 症状としては、歯茎の腫れや出血が慢性化し、膿が出ることもあります。口臭が強くなり、歯が長く見えるようになります。歯が浮いた感じがしたり、噛むと痛みを感じたりすることもあります。 重度歯周炎(末期段階) 最も進行した段階が「重度歯周炎」です。歯周ポケットが8mm以上と非常に深くなり、歯を支える骨の2分の1以上が失われています。この段階が、いわゆる「手遅れ」に近い状態と言えます。 症状 症状としては、歯が大きくグラグラと動き、噛むことが困難になります。 歯茎から膿が頻繁に出て、強い口臭があります。痛みや腫れが繰り返し起こり、場合によっては発熱することもあります。この段階では、多くの場合、歯を保存することが困難で、抜歯が必要になることがあります。 手遅れになる前に気づくべき症状 歯周病を手遅れにしないためには、早期の症状に気づき、適切に対処することが重要です。 初期の危険サイン 最も重要な初期サインは「歯磨き時の出血」です。健康な歯茎は、通常のブラッシングで出血することはありません。 歯磨き後に歯ブラシに血がついたり、うがいの水に血が混じったりする場合は、歯肉炎の可能性があります。 また、「歯茎の色の変化」も重要なサインです。健康な歯茎は薄いピンク色をしていますが、炎症が起きると赤く腫れぼったくなります。「口臭」も初期の症状の一つで、歯周病菌が繁殖すると特有の臭いが発生します。 進行のサイン 歯周病がある程度進行すると、より明確な症状が現れます。「歯茎からの膿」が出る場合は、炎症がかなり進行している証拠です。「歯が長く見える」ようになったら、歯茎が下がっている(歯肉退縮)サインです。 歯周病によって歯を支える骨が失われると、歯茎も一緒に下がります。「歯がしみる」症状も、歯周病の進行によって起こります。 歯茎が下がると、本来歯茎に覆われていた象牙質という部分が露出し、冷たいものや熱いものがしみるようになります。 手遅れに近い危険な症状 特に注意が必要な症状は「歯のグラつき」です。歯を支える骨が大きく失われると、歯が動くようになります。 指で押すと歯が動く、噛むと歯が動く感じがする場合は、重度の歯周病の可能性があります。 「噛むと痛い」「歯が浮いた感じがする」という症状も、歯周病がかなり進行しているサインです。「歯茎の腫れや痛みが繰り返す」場合も要注意です。急性炎症と慢性炎症を繰り返すことで、骨の破壊が急速に進行することがあります。 手遅れと判断される基準 歯周病の「手遅れ」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。 抜歯が必要になる基準 歯科医師が抜歯を検討する主な基準は、「歯を支える骨の残存量」です。 一般的に、歯を支える骨が3分の1以下しか残っていない場合、歯を保存することが困難になります。レントゲン検査で骨の状態を確認し、総合的に判断します。 「歯の動揺度」も重要な判断基準です。歯の動揺度は、0度(動かない)からⅢ度(大きく動く)まで分類されます。Ⅱ度以上の動揺があり、骨の残存量も少ない場合は、抜歯が検討されます。 保存可能かどうかの見極め ただし、「手遅れ」の判断は単純ではありません。歯の状態だけでなく、患者さんの年齢、全身状態、口腔衛生習慣、治療への協力度なども考慮されます。 例えば、歯の動揺が大きくても、周囲の歯と固定することで機能を回復できる場合があります。 また、歯周組織再生療法という特殊な治療によって、失われた骨をある程度回復できることもあります。当院では、できる限り歯を残す方向で治療計画を立てますが、無理に保存することでかえって周囲の歯や骨に悪影響を及ぼす場合は、抜歯をお勧めすることもあります。 手遅れにしないための予防と対策 歯周病を手遅れにしないためには、日常的な予防と早期治療が重要です。 正しい歯磨きと定期検診 歯周病予防の基本は、毎日の正しい歯磨きです。歯と歯茎の境目に歯ブラシの毛先を45度の角度で当て、小刻みに動かして磨きます。 歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れを十分に落とせないため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用しましょう。 歯周病は自覚症状が少ないまま進行することが多いため、定期的な歯科検診が非常に重要です。 3〜6ヶ月に一度、歯科医院で検診を受けることで、歯周病の早期発見と早期治療が可能になります。歯科検診では、歯周ポケットの深さを測定し、歯茎の炎症の程度を確認します。 専門的なクリーニングと生活習慣改善 自宅でのブラッシングだけでは、歯石を完全に除去することはできません。歯科医院での専門的なクリーニング(スケーリング・ルートプレーニング)を定期的に受けることで、歯石を除去し、歯周病の進行を防ぐことができます。 当院では、患者さん一人ひとりの口腔内の状態に応じた、適切なメンテナンスプログラムを提供しています。 喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つです。タバコに含まれる有害物質が歯茎の血流を悪化させ、免疫力を低下させるため、歯周病が進行しやすくなります。禁煙することで、歯周病のリスクを大きく減らすことができます。 また、糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼします。糖尿病がある方は、特に歯周病の管理に注意が必要です。 当院は総合歯科として、虫歯治療、歯周病治療から審美歯科治療まで一貫して対応でき、患者さんにしっかり向き合い、最善の治療を提供することを大切にしています。 よくある質問 Q.歯周病は痛みがなくても進行しますか? はい、歯周病の最も危険な特徴は、初期から中期にかけて痛みがほとんどないことです。そのため「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれています。 痛みがないからといって放置すると、気づいた時には重度に進行していることがあります。 痛みがなくても、歯茎の出血や腫れ、口臭などの症状がある場合は、早めに歯科医院を受診することが重要です。定期的な歯科検診を受けることで、自覚症状がない段階でも歯周病を発見し、早期に治療を開始できます。 Q.歯がグラグラしていても治療で改善できますか? 歯の動揺の程度と、歯を支える骨の残存量によります。軽度の動揺であれば、歯石除去や適切なブラッシング指導、場合によっては歯周外科治療によって改善する可能性があります。 中等度の動揺の場合は、周囲の歯と固定することで機能を回復できることがあります。 ただし、重度の動揺があり、骨の残存量も少ない場合は、残念ながら抜歯が必要になることが多いです。 歯がグラグラすると感じたら、できるだけ早く歯科医院を受診してください。早期に治療を開始すれば、歯を保存できる可能性が高まります。 Q.歯周病の治療にはどのくらいの期間がかかりますか? 歯周病の進行度によって治療期間は大きく異なります。軽度の歯肉炎であれば、1〜2回のクリーニングと正しいブラッシングの実践で、数週間で改善することがあります。 軽度から中等度の歯周炎の場合、歯石除去などの基本治療に2〜3ヶ月、その後の経過観察に数ヶ月かかります。 重度の歯周炎の場合は、基本治療に加えて歯周外科治療が必要になることがあり、治療期間は6ヶ月から1年以上かかることもあります。 また、治療が終了した後も、再発を防ぐために3〜6ヶ月に一度の定期メンテナンスを継続することが重要です。歯周病は慢性疾患であり、長期的な管理が必要な病気です。 Q.歯周病は全身の病気とも関係がありますか? はい、歯周病は口の中だけの問題ではなく、全身の健康とも深く関係しています。歯周病菌が血流に乗って全身に広がることで、様々な全身疾患のリスクを高めることが分かっています。 特に関連が深いのは、心臓病や脳卒中です。歯周病があると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが約2〜3倍高くなると報告されています。 また、糖尿病との関連も強く、歯周病があると血糖コントロールが困難になり、逆に糖尿病があると歯周病が悪化しやすくなります。 さらに、妊娠中の女性が歯周病にかかっていると、早産や低体重児出産のリスクが高まることも知られています。このように、歯周病の治療と予防は、全身の健康を守るためにも非常に重要です。 Q.歯周病は遺伝しますか? 歯周病自体は遺伝病ではありませんが、歯周病のなりやすさ(易罹患性)には遺伝的な要因が関与していることが分かっています。 同じような口腔衛生状態でも、歯周病が進行しやすい人とそうでない人がいるのは、免疫反応や炎症反応に関わる遺伝子の違いが影響していると考えられています。 特に、若い年齢で重度の歯周病を発症する「侵襲性歯周炎」には、遺伝的要因が強く関与しています。 家族に歯周病で歯を失った人がいる場合は、自分も歯周病のリスクが高い可能性があるため、より注意深い口腔ケアと定期的な歯科検診が必要です。 ただし、遺伝的な要因があっても、適切な予防と治療によって歯周病を防ぐことは十分可能です。

2026.02.25