歯茎が赤く腫れ、歯磨きの際に出血が見られる段階です。
歯周ポケットの深さは2〜3mm程度で、歯槽骨への影響はまだありません。この段階であれば、適切なブラッシングと歯科医院でのクリーニングによって健康な状態に戻すことが可能です。
歯周病は、日本の成人の約8割が罹患しているとされる口腔内の感染症です。「名前は聞いたことがあるけれど、実際にどんな病気なのかよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、歯周病がどのような疾患なのか、なぜ発症するのか、どのように進行するのかを、メカニズムから丁寧に解説します。

歯周病とは、歯と歯茎の境目に蓄積した細菌(プラーク)が原因で、歯茎や歯を支える組織に慢性的な炎症が起きる疾患の総称です。
大きく分けて、炎症が歯茎だけにとどまっている「歯肉炎」と、歯を支える骨(歯槽骨)にまで炎症が及んだ「歯周炎」の2つに分類されます。
口腔内には約700種類以上の細菌が存在していますが、歯周病の主要な原因菌の多くは「嫌気性細菌(けんきせいさいきん)」と呼ばれ、酸素の少ない環境を好む性質があります。
歯と歯茎の間にある「歯周ポケット」は酸素が届きにくいため、嫌気性細菌にとって格好の棲みかとなります。
代表的な歯周病原因菌としては、P.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)やT.f.菌(タネレラ・フォーサイシア)などが知られています。
これらの細菌はプラーク(歯垢)の中で「バイオフィルム」という膜状の集合体を形成し、歯ブラシだけでは完全に除去できない強固な構造を作ります。
プラークが口腔内に残り続けると、唾液中のカルシウムやリンと結合して約48時間〜2週間で「歯石」へと石灰化します。
歯石そのものが直接歯周病を引き起こすわけではありませんが、歯石の表面はザラザラしており、新たなプラークが付着しやすくなるため、細菌の増殖を加速させます。
歯石は歯ブラシでは除去できないため、歯科医院での専門的な処置(スケーリング)が必要です。歯石が蓄積したまま放置すると、歯周ポケットはさらに深くなり、歯周病が進行する悪循環に陥ります。
歯周病は急激に悪化するのではなく、数年〜数十年という長い期間をかけてゆっくりと進行する慢性疾患です。
自覚症状に乏しいため「サイレントディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれています。進行の段階は大きく4つに分けられます。
歯茎が赤く腫れ、歯磨きの際に出血が見られる段階です。
歯周ポケットの深さは2〜3mm程度で、歯槽骨への影響はまだありません。この段階であれば、適切なブラッシングと歯科医院でのクリーニングによって健康な状態に戻すことが可能です。
歯周ポケットが3〜4mm程度に深くなり、歯槽骨の吸収が始まります。歯茎の腫れや出血に加え、軽い口臭が生じることがあります。
自覚症状がまだ少ないため、この段階で気づく方は多くありません。歯科検診を受けて初めて指摘されるケースが大半です。
歯周ポケットが4〜6mmに達し、歯槽骨の吸収が進行します。歯茎が下がって歯が長く見えるようになったり、硬いものを噛むと痛みを感じたりする症状が現れます。
歯を指で押すとぐらつきを感じる場合もあります。この段階では、専門的な歯周治療(SRP:スケーリング・ルートプレーニング)が必要です。
歯周ポケットが6mm以上となり、歯槽骨の大部分が失われた状態です。
歯が著しくぐらつき、膿(うみ)が出たり、強い口臭が生じたりします。この段階では外科手術が検討されますが、場合によっては抜歯が避けられないこともあります。

歯周病はプラーク中の細菌が直接的な原因ですが、発症や進行のしやすさには個人差があります。これは、細菌以外にも歯周病のリスクを高めるさまざまな要因が存在するためです。
喫煙は、歯周病の最大のリスク因子の一つとされています。タバコに含まれるニコチンは歯茎の血行を悪化させ、免疫細胞の働きを低下させます。
喫煙者は非喫煙者と比べて歯周病の発症リスクが2〜8倍高く、治療への反応も悪いことが多くの研究で報告されています。
糖尿病も歯周病と密接な関係にある全身疾患です。高血糖の状態が続くと免疫機能が低下し、歯周病菌に対する抵抗力が弱まります。
逆に、歯周病による慢性炎症が血糖コントロールを悪化させることも分かっており、両者は双方向的に影響し合う関係にあります。
そのほか、ストレス、不規則な食生活、歯ぎしり・食いしばり、不適合な詰め物や被せ物、口呼吸なども歯周病のリスクを高める要因として挙げられます。
遺伝的な要因も一部関与しているとされ、家族に歯周病の方が多い場合は注意が必要です。

近年の研究により、歯周病は口腔内だけの問題ではなく、全身の健康にも影響を及ぼすことが明らかになっています。
歯周病菌や炎症性物質が血流に乗って全身をめぐることで、さまざまな疾患のリスクを高めることが分かってきました。
歯周病との関連が報告されている全身疾患としては、糖尿病、動脈硬化・心疾患、脳血管障害(脳梗塞)、誤嚥性肺炎、低体重児出産・早産などがあります。
特に糖尿病との関連は強く、歯周病を「糖尿病の第6の合併症」と位置づける研究者もいます。
口腔内の健康は全身の健康と直結しています。歯周病の予防と治療は、歯を守るだけでなく、全身の健康リスクを下げることにもつながります。定期的な歯科検診を通じて、歯周病の早期発見・早期治療に努めましょう。
取手市の飯塚歯科医院では、歯周病の検査・治療から定期的な予防メンテナンスまで、一貫した歯周病ケアを行っております。少しでも気になる症状がある方は、お気軽にご来院ください。
はい、歯周病は年齢に関係なく発症します。特に歯肉炎は10代〜20代でも多く見られます。
また、まれに「侵襲性歯周炎」と呼ばれるタイプの歯周炎は、20〜30代の若い年齢層に急速に進行することがあります。若いうちから正しいセルフケアと定期検診を習慣にすることが大切です。
歯周病の原因菌は、唾液を介して他者に感染する可能性があります。特に、食器の共用やキスなどを通じて家族間で感染するケースが報告されています。
ただし、細菌が口腔内に定着しても、すぐに歯周病を発症するわけではなく、口腔内の衛生状態や免疫力などの条件が重なって発症に至ります。
歯槽膿漏(しそうのうろう)は、以前使われていた歯周病の俗称です。
現在では「歯周病」または「歯周炎」「歯肉炎」という正式な病名が使われています。内容としては同じ疾患を指していますので、歯槽膿漏と言われた経験がある方は、歯周病の治療を受けているとお考えください。
歯科医院では、「プロービング」と呼ばれる検査で歯周ポケットの深さを測定します。先端が丸い細い器具を歯周ポケットに挿入し、深さと出血の有無を確認します。
加えて、歯のぐらつき(動揺度)の検査やレントゲン撮影による歯槽骨の状態確認も行います。これらの検査結果を総合して、歯周病の進行度を診断します。
歯周病予防を目的とした歯磨き粉には、殺菌成分(IPMP、CPC、CHXなど)や抗炎症成分(トラネキサム酸、グリチルリチン酸など)が配合されたものがあります。
これらは補助的な効果が期待できますが、最も重要なのは歯磨き粉の種類よりも「正しいブラッシング方法」と「歯間清掃の習慣」です。
歯磨き粉だけに頼らず、機械的にプラークを除去することを優先してください。