2026.03.16

歯周病は自分で治せる?治る・治らないの境界線と正しい治し方を歯科が解説

「歯茎から血が出る」「口臭が気になる」こうした症状に心当たりがある方は、歯周病が進行しているかもしれません。

歯周病は日本の成人の約8割が罹患しているとされる疾患ですが、適切な治療とセルフケアの組み合わせによって改善が期待できます。

この記事では、歯周病の段階に応じた治療法と、ご自宅で実践できるケアの方法を詳しく解説します。

歯周病はなぜ
「治療」が必要なのか、
放置した場合のリスク

歯周病はなぜ「治療」が必要なのか、放置した場合のリスク

歯周病は、歯と歯茎の間にある「歯周ポケット」と呼ばれる溝に細菌が蓄積し、慢性的な炎症を引き起こす感染症です。初期段階では自覚症状がほとんどないため、多くの方が「痛みがないから大丈夫」と放置してしまいます。

しかし、歯周病を放置すると炎症は歯茎だけにとどまらず、歯を支えている「歯槽骨(しそうこつ)」という骨にまで及びます。

歯槽骨が溶けると、歯がぐらつき始め、最終的には抜け落ちてしまいます。実際に、日本人が歯を失う原因の第1位は歯周病です。

全身の健康を脅かす「歯周病」のリスク

さらに近年の研究では、歯周病が糖尿病や心疾患、誤嚥性肺炎などの全身疾患とも関連していることが明らかになっています。つまり、歯周病の治療は「歯を守る」だけでなく、「全身の健康を守る」ことにもつながるのです。

歯周病の原因となる細菌は、歯に付着した「プラーク(歯垢)」の中に棲んでいます。プラークは食後約8時間で形成され始め、約48時間で「歯石」へと「石灰化(せっかいか)」します。

歯石は歯ブラシでは除去できないため、歯科医院での専門的な処置が不可欠です。このように、歯周病の治療にはセルフケアと歯科医院での処置の両方が必要になります。

段階別に見る
歯周病の治療法、
歯科医院で行う処置

歯周病の治療は、進行度に応じて段階的に行われます。

歯科医院では、まず歯周ポケットの深さを測定する「歯周検査」を実施し、進行度を正確に把握したうえで治療計画を立てます。

軽度の歯周病(歯肉炎〜軽度歯周炎):スケーリングによるプラーク・歯石の除去

歯周ポケットの深さが3〜4mm程度の軽度の段階では、「スケーリング」と呼ばれる処置が基本となります。スケーリングとは、専用の器具を用いて歯の表面や歯茎の境目に付着した歯石・プラークを機械的に除去する治療です。

軽度の歯周病(歯肉炎〜軽度歯周炎):スケーリングによるプラーク・歯石の除去

超音波スケーラーという器具を使うことで、短時間で広範囲の歯石を除去できます。

痛みが心配な方もいらっしゃいますが、軽度の段階であれば痛みはほとんどなく、1〜2回の通院で完了するケースが多いです。スケーリング後は歯茎の炎症が収まり、歯周ポケットの深さも改善していきます。

中等度の歯周病:SRP(スケーリング・ルートプレーニング)による歯根面の清掃

歯周ポケットが4〜6mm程度に深くなると、歯茎の下(歯根の表面)にまで歯石が付着している状態です。この場合は「SRP(スケーリング・ルートプレーニング)」という処置を行います。

SRPでは、局所麻酔を使用したうえで、歯根の表面に付着した歯石や汚染されたセメント質を除去し、歯根面を滑らかに仕上げます。

中等度の歯周病:SRP(スケーリング・ルートプレーニング)による歯根面の清掃

歯根面を滑らかにすることで、再び細菌が付着しにくい環境を作ることができます。

SRPは1回の処置で口腔内全体を行うのではなく、4〜6回に分けて部位ごとに行うのが一般的です。処置後は歯茎が引き締まり、歯周ポケットが浅くなることが期待できます。

重度の歯周病:歯周外科手術による骨や組織の再建

歯周ポケットが6mm以上に達し、歯槽骨の吸収が進んだ重度の歯周病では、外科的な治療が検討されます。

代表的な術式としては、歯茎を切開して歯根面を直接見ながら清掃する「フラップ手術」や、溶けた骨の再生を促す「歯周組織再生療法」があります。

重度の歯周病:歯周外科手術による骨や組織の再建

歯周組織再生療法では、「エムドゲイン」や「リグロス」といった薬剤を用いて、失われた歯槽骨や歯根膜の再生を図ります。

ただし、すべてのケースで再生療法が適用できるわけではなく、骨の吸収パターンや残存する骨の量によって適応が判断されます。

重度の歯周病であっても、適切な治療により歯を保存できる可能性はありますので、まずは歯科医師に相談することが大切です。

自宅でできる歯周病ケア、
毎日の習慣が治療効果を
左右する

自宅でできる歯周病ケア、毎日の習慣が治療効果を左右する

歯科医院での治療と同じくらい重要なのが、毎日のセルフケアです。

どれほど専門的な治療を受けても、日常のケアが不十分であれば歯周病は再発します。ここでは、治療効果を最大限に引き出すためのセルフケアのポイントを解説します。

正しいブラッシング法:「バス法」で歯周ポケット内の汚れを除去

歯周病のケアに適したブラッシング法は「バス法」と呼ばれる方法です。

歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度で当て、小刻みに振動させるように磨きます。この方法により、歯周ポケット内のプラークを効率よく除去できます。

歯ブラシは「やわらかめ」のものを選び、力を入れすぎないことが重要です。ゴシゴシと力を入れて磨くと、歯茎を傷つけてしまい、かえって症状を悪化させる原因になります。

1回のブラッシングにかける時間は最低3分以上を目安にしてください。

歯間清掃器具の活用:歯ブラシだけでは約6割しか除去できない

歯ブラシだけで除去できるプラークは、口腔内全体の約60%にとどまるとされています。残りの約40%は歯と歯の間に残っており、この部分のケアには「デンタルフロス」や「歯間ブラシ」の使用が欠かせません。

歯間ブラシにはサイズがあり、歯と歯の隙間に合った適切なサイズを選ぶことが重要です。サイズが合っていないと、清掃効果が低下したり、歯茎を傷つけたりする可能性があります。

ご自身に合ったサイズが分からない場合は、歯科医院で指導を受けることをおすすめします。

生活習慣の改善:喫煙・ストレス・食生活の見直し

喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つです。タバコに含まれるニコチンは歯茎の血管を収縮させ、免疫機能を低下させるため、歯周病の進行を加速させます。

禁煙するだけで歯周病の治療効果が大幅に向上することが多くの研究で示されています。

また、ストレスや睡眠不足は免疫力の低下を招き、歯周病菌に対する抵抗力を弱めます。バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動など、基本的な生活習慣を整えることも歯周病の改善に寄与します。

歯周病の治療期間と
定期メンテナンスの
重要性

歯周病の治療期間と定期メンテナンスの重要性

歯周病の治療期間は進行度によって異なります。軽度であれば1〜2か月、中等度で3〜6か月、重度の場合は半年〜1年以上かかることもあります。

治療完了後も、歯周病は「完治」ではなく「コントロール」する疾患であるため、定期的なメンテナンス(3〜4か月に1回の通院)が再発防止のために不可欠です。

歯科医院で行う「プロフェッショナルケア」の内容

メンテナンスでは、歯周ポケットの再検査、プロフェッショナルクリーニング(PMTC)、ブラッシング指導などを行います。

定期メンテナンスを継続している方と中断した方では、歯の喪失率に大きな差があることが研究で明らかになっています。治療後のメンテナンスまでを含めて、歯周病治療の全体像と捉えることが大切です。

取手市の飯塚歯科医院では、患者様一人ひとりの歯周病の状態に合わせた治療計画を作成し、丁寧な説明と治療を行っております。歯茎の出血や口臭など気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。

よくある質問

Q.歯周病は自力で治すことはできますか?

歯肉炎(歯周病の最初期)の段階であれば、正しいブラッシングと歯間清掃の徹底によって炎症を改善できる場合があります。

しかし、歯石が付着している場合や歯周ポケットが深くなっている場合は、セルフケアだけでは改善が難しく、歯科医院での専門的な治療が必要です。

Q.歯周病の治療は痛いですか?

軽度の歯周病に対するスケーリングでは、痛みはほとんどありません。中等度以上のSRPや外科処置では局所麻酔を使用しますので、処置中の痛みはコントロールされます。

処置後に軽い痛みや腫れが生じることがありますが、通常は数日で落ち着きます。

Q.歯周病の治療にはどれくらいの費用がかかりますか?

歯周病の基本的な治療(検査・スケーリング・SRP)は保険適用となります。3割負担の場合、1回の通院あたり数千円程度が目安です。

ただし、歯周組織再生療法など一部の治療は自費診療となる場合があります。詳しくは当院までお問い合わせください。

Q.歯周病が再発することはありますか?

はい、歯周病は再発しやすい疾患です。治療によって症状が改善しても、セルフケアが不十分であったり、定期メンテナンスを中断したりすると、再び悪化する可能性があります。

治療後も3〜4か月ごとの定期検診を継続することが重要です。

Q.歯周病の治療中に気をつけることはありますか?

治療期間中は、指導されたブラッシング方法を毎日丁寧に実践することが最も大切です。また、喫煙されている方は禁煙を強くおすすめします。

喫煙は歯周病の治療効果を大幅に低下させることが分かっています。食生活や睡眠など、基本的な生活習慣の見直しも治療の成功に関わります。